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連日35.0℃以上の猛暑が続く日本列島。
夕立が降ることもなく、都会は太陽熱を吸収し、自らの発する熱でますます気温が上がってゆく。
そんな中、名古屋にある古びたマンションの一室で女性の変死体が発見された。
女性の名前はさくら。
源氏名ではない。
発見したのは遊びに来た会社の同僚、川村ゆきえ(「どんど晴れ」の仲居・松本佳奈)。
「1週間も夏休みもらったところで、何もすることがない!ゆきえ、遊びに来てよ」と、休み前に、さくらに強引に約束を取り付けられて来てみたのだと言う。
しかし、自分から呼びつけておいたにも関わらず、何度チャイムを鳴らしても返事はなく、「さすがさくら先輩、約束忘れて出かけたんじゃない?」とゆきえは思ったが、念のためドアノブを回してみると鍵が開いていたので、部屋に入った。
「さくら先輩?ひょっとして、トイレですか?冷たいものの食べ過ぎでおなか壊したとか?」
ゆきえの問いかけに答える声はない。
そのまま部屋の奥へ入っていくと・・・果たして、居間には倒れたさくらが!
「先輩!?」
さくらに駆け寄るゆきえ。
手にしていたコンビニの袋が床に落ち、氷とペットボトルが大きな音を立てる。
しかし、さくらがその音を聞くことはなかった・・・
駆けつけた救急隊員によってさくらの死亡が確認され、警察が呼ばれた。
ゆきえは第一発見者として警察の事情聴取を受けることになった。
「それじゃ、あなたが呼ばれた以外は、さくらさんは予定はなかったと言うことですね?」
ゆきえの話を確認する船越英一郎。
「たぶん・・・退屈しのぎに休みの真ん中くらいに来てよ、と言われましたから」
「部屋に呼んだのは、何か理由があったんでしょうか?」
「どうでしょう?部屋の掃除でもさせるつもりだったかもしれません。時々、頼まれましたから」
「その前から休みだったんですよね?掃除くらいご自分でされるのでは?」
「暑いですし・・・片付けや掃除が苦手な人なんです」
「あなた、それでよかったんですか?・・・いや、失礼。でも、ちょっと勝手だな、と僕は思うんですが」
「普段は気のいい人なんですよ。ちょっと、変わってますけど」
寂しげに微笑むゆきえに船越も微笑み返す。
「ところで、”かずおき”という名前に心当たりはありませんか?」
「かずおき、ですか?・・・確か、さくら先輩の好きな人の名前だったと思います」
「好きな人?恋人じゃなくて?」
「お付合いしている方はいなかったはずです。いれば、休みに私なんか呼ばないでしょう?」
「それもそうですね。ところで、その方はどこの方かご存知ですか?」
「役者さんだとか・・・なんでも、すごくかっこよくて一目惚れしたって。先日、舞台を見に行った際にアドレスを教えてもらったって嬉しそうに話してました。でも、その方が何か?」
そこへ、若い刑事がやってきて、船越に耳打ちする。
船越はゆきえに向き直った。
「死因が判明しました。大量の血液が気管に流れ込んだことによる窒息死です」
「血液?」
「はい。それと、頭部に殴られたような痕がありました」
「殴られた・・・誰に、ですか?」
「それは分かりません。何かお心当たりはありませんか?」
「いえ・・・多少、強引な人ではありましたけど、殺されるほど嫌われるなんてことはないと思います」
「なるほど。みなさん、あなたのように寛大だと良いのですがね」
こうしてゆきえの事情聴取は終わり、船越はゆきえを帰したのだった。
「それで?被害者はあんなダイイング・メッセージを残したのよ?犯人はその”かずおき”って奴に決まってるじゃない!警察は何をやってるのよ!?」
一人、鼻息を荒くしているのは監察医の名取裕子。
今回、変死と言うことで現場に呼ばれ、さくらの検視や解剖を担当した際に、さくらが書いたと思われる「かずおき」と言う血文字を見ており、船越に「犯人だ!逮捕しろ!」と迫っているのだ。
「その、ダイニングだかリビングだか知らないけど、そんなもんだけで犯人逮捕できたら俺達警察は万々歳だけどな。世の中そんなに甘くないんですよ、先生」
「ダ・イ・イ・ン・グ!まったくもう!こんな基礎用語も知らない警察じゃ、そりゃ、犯人逮捕も難しいでしょうね」
「なんだって!?まったく、素人が捜査に口出しなんかしないでくださいよ!こちらはこちらのやり方があるんです!」
「だって、被害者はしっかり彼の名前を書き残しているのよ?死の間際に犯人以外の誰の名前を書くって言うのよ?」
「そりゃ、色々あるでしょうよ」
「色々って?」
「・・・親の名前とか、ペットの名前とか、親友の名前とか」
段々先細りする船越の声。
「まぁったく話になんない!ここで油売ってる暇があったら、さっさと犯人逮捕してきなさいよ!」
「言われなくたって行ってきますよ!・・・まったく、ほんと、口の減らない監察医だな」
「何!?何か言った!?」
「いーえ、なぁんも言ってません!それじゃ捜査に行ってきますっ!」
軽く手をあげてそそくさと研究室を出る船越を見送り、名取はにやりと不敵な笑みを浮かべた。
<つづく>
※医学用語だの法律用語だの警察用語だのの知識はまったくないので、それらしいことを適当に書いています。<おいっ!
その辺りのツッコミはご容赦ください!